繰り上げの注意点

【年金】繰り上げ受給の注意点まとめ|知らずに申請して後悔しないために

「60歳から年金がもらえるなんてお得!」 こう思ってしまいがちな繰り上げ受給ですが、実は注意点がとても多い制度です。 一度選択すると一生影響する項目もあり、あとで取り返しがつかないケースもあります。

この記事では、繰り上げ受給に関する重要なポイントを「やさしく・現実的に」整理します。 とくに加給年金や障害年金との関係は誤解が多いため、丁寧に解説していきます。


1. 繰り上げ受給とは?(60〜64歳で前倒しできる制度)

本来、老齢基礎年金・老齢厚生年金は65歳から受け取りますが、 60~64歳の間に早めて受給できるのが「繰り上げ受給」です。

  • 1か月繰り上げるごとに0.4%減額
  • 減額は一生続く
  • 繰り上げ後は原則取り消し不可
繰り上げ年齢減額率例:65歳で月14万円 → 繰り上げ後
64歳約4.8%約13.33万円
63歳約9.6%約12.64万円
62歳約14.4%約11.98万円
61歳約19.2%約11.32万円
60歳約24%約10.64万円

※老齢基礎年金・老齢厚生年金は部分的に繰り上げることはできません。


2. 繰り上げ受給の「大事な注意点」

① 一生減額(取り返せない)

繰り上げによる減額は永久に続きます。 65歳になったら元に戻る、といったことはありません。

ポイント: 長生きするほど総額で不利になりやすい制度です。

② 原則取り消しできない

「やっぱり早まったかも…」と思っても、 繰り上げ後の取消は基本的にできません。

例外は、直後の一部のケースに限られ、通常は取り消しは認められません。


3. 障害年金・遺族年金との関係

(1)障害年金は請求できなくなる

繰り上げ受給をすると、たとえ繰り上げ後に障害状態になっても
障害基礎年金は請求できなくなります。

もし健康に不安がある人は、繰り上げは慎重に検討すべき大きな理由です。

(2)遺族年金は併給できるケースあり

遺族年金は繰り上げの有無にかかわらず受給できるケースが多いですが、 併給の可否は遺族厚生年金と老齢厚生年金の関係などによって変わります。

生年月日や加入歴により判定が異なるため、これは個別確認が必要です。


4. 将来の生活資金が不足するリスク

60歳から受け取ることで「当面の生活費」は助かります。 しかし、老後は医療・介護費が増える時期でもあり、 65歳以降の受給額が低いと暮らしが苦しくなる面もあります。

とくに

  • 長生き家系
  • 65歳以降も働く予定
  • 十分な貯蓄がある
の場合は、繰り上げより繰り下げのほうが有利になることも多いです。


5. 加給年金との関係|停止されるケースに注意

繰り上げ受給を考える際、特に見落とされやすいのが加給年金との関係です。

(1)配偶者が厚生年金20年以上加入している場合

妻(または夫)が厚生年金に20年以上加入していると、 妻(夫)が65歳以降に老齢厚生年金を受給できるため、 加給年金は支給停止となります。

繰り上げするかどうかとは関係なく 「配偶者が厚生年金20年以上加入している」 という事実だけで加給は止まります。

(2)令和4年4月の法改正による“さらに厳しい”基準

令和4年4月以降は 配偶者が老齢または退職を支給事由とする年金の受給権を持つだけで
加給年金は支給停止となりました。

年金が実際に支給されているかどうかは関係ありません。 「受給権があるかどうか」で判定されます。


6. まとめ:繰り上げは「リスクの把握」が最重要

繰り上げ受給には、次のような注意点があります。

  • 一生減額される(取り返せない)
  • 原則取り消し不可
  • 障害年金が請求できなくなる
  • 長生きすると総額が大きく減る
  • 配偶者が厚生年金20年以上 → 加給年金は停止
  • 令和4年4月〜は配偶者が老齢・退職年金の「受給権あり」で停止

「早くもらえる安心感」と「将来の受給額の低下」はトレードオフです。 特に健康状態・家族の年金状況・老後資金の見通しによって結論は大きく変わります。

ご自身の状況に合わせて、ねんきんネットや年金事務所での見込み額の確認をおすすめします。

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