遺族基礎年金と遺族厚生年金について
遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族年金は、家計を支えていた方が亡くなられたとき、その後の生活を守るための公的な仕組みです。 「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」という二つの制度で構成されており、加入していた年金制度や家族構成によって受け取れる内容が変わります。 大切な場面で慌てないためにも、全体像を知っておくと安心です。
まずは全体像をおさえる
| 制度 | 対象者の主な範囲 | 金額の考え方(2025年度) |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 「子のある配偶者」または「子」 ※子=18歳到達年度末まで(障害1・2級は20歳未満) |
年額 831,700円 + 子の加算 |
| 遺族厚生年金 | 配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり) | 亡くなった方の報酬比例部分 × 3/4 妻は要件を満たせば中高齢寡婦加算(623,800円) |
遺族基礎年金は「子のある配偶者(または子)」に限定されるのに対し、
遺族厚生年金は対象者の範囲が広いのが特徴です。
この違いを理解しておくと、整理しやすくなります。
遺族基礎年金|主な要件と金額(令和7年度)
| 主な受給要件 | 対象は「子のある配偶者」または「子」。亡くなった方が国民年金の被保険者等であり、保険料納付要件を満たすことが必要です。 |
|---|---|
| 年額(基本) | 831,700円 |
| 子の加算 | 第1子・第2子:各239,300円/ 第3子以降:各79,800円 |
| モデル(子のある配偶者) | 年額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 子1人 | 1,071,000円 | 831,700 + 239,300 |
| 子2人 | 1,310,300円 | 831,700 + 239,300 ×2 |
| 子3人 | 1,390,100円 | 831,700 + 239,300 ×2 + 79,800 |
子だけが受け取る場合は、(基本額+2人目以降の加算)を子の人数で案分します。 例:子2人=(831,700+239,300)÷2
遺族厚生年金|要件・加算・受給順位
遺族厚生年金は、厚生年金加入者が亡くなった場合に支給されます。対象となる範囲が広いため、家族構成によって受け取れる人が変わります。
| 受給要件 | 厚生年金加入中の死亡、傷病による初診日から5年以内の死亡、障害厚生年金1・2級受給者の死亡、老齢厚生年金の受給権者等の死亡など。 |
|---|---|
| 年金額の基本 | 亡くなった方の報酬比例部分 × 4分の3 |
| 中高齢寡婦加算 | 妻が40~65歳、かつ一定の要件を満たすと、年額 623,800円が上乗せされます。 |
| 受給順位 | ①妻(夫)・子 → ②父母 → ③孫 → ④祖父母(制度上の優先順位に従う) |
経過的寡婦加算:昭和31年4月1日以前生まれの妻には、65歳以降に「経過的寡婦加算」が上乗せされるケースがあります。
※昭和31年4月2日以降生まれには適用されません。
よくあるご相談のパターン
| ケース | ポイント |
|---|---|
| 子のある配偶者 | 遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が併給される最も一般的なケースです。 |
| 子のいない40~65歳の妻 | 遺族厚生年金に中高齢寡婦加算がつく可能性があります。65歳以降は老齢年金との選択が必要です。 |
| 子が18歳到達年度末になった | 遺族基礎年金は終了。妻が40~65歳なら、中高齢寡婦加算がつく場合があります。 |
| 収入が少ない遺族 | 要件を満たすと、遺族年金生活者支援給付金(月額 5,450円)が上乗せされることがあります。 |
手続きで気をつけたい点
- 生計維持関係の確認:同居・仕送り状況などを証明する書類が必要になることがあります。
- 初診日があるケース:傷病起因の場合、初診日の特定が重要です。
- 必要書類:戸籍・住民票・所得証明など、子の加算や支援給付金で必要になることがあります。
- 65歳前後の選択:老齢年金との併給調整が発生するため、受給額の比較がポイントになります。
まとめ
遺族年金は、ご家族の構成や年齢によって大きく受け取れる内容が変わります。 遺族基礎年金は基礎 831,700円に子の加算が上乗せされ、 遺族厚生年金は報酬比例の3/4が基本。 妻には条件により中高齢寡婦加算(623,800円)が追加される場合があります。 節目ごとに「今どの制度に該当するか」を確認しておくことが大切です。
(金額はいずれも年額。支払は偶数月に前月分まで。本文は令和7年時点の公表値に基づきます。)

